「ゆず」が1歳半ぐらいの話。
当時、保育園の朝の送りは僕が担当していた。
もちろん、まだ「もも」も一緒に通園していた。
その頃の僕のクラスは、前年度とは打って変わって、
やんちゃで、話が聞けなくて、でもまぁ、かわいげがあって、
とはいえ、毎日揉め事があるようなクラスの担任だった。
仕事も前年度とガラッと変わって、校長が変わり、
仕事の担当が変わり、
前年度との反動が大きくて、
結構、気分がしんどい毎日だった。
運動会があった5月頃、
仕事がしんどくなり、家のことをこなすこともしんどくなり、
朝、起きられなくなった。
医者に行ったら「うつ病」と診断された。
人生初の休職をした。
家にいても寝てるだけ、動けたら家事をするけど、
ほとんど動いていないに等しい。
でも、娘たちが家にいるときは、いつも通りにしていたので、
2人とも「よく分からないけど、毎日パパがいる」という感じで、
何だか喜ばれたことを覚えている。
そんな頃の話。
1歳半の「ゆず」には、検診やら予防接種やら、
やたら病院巡りすることが多かった。
そのたびに、2人で出かけるのだが、
保育園は自転車で行くのが好きなくせに、
病院には歩いたり、抱っこされたりを好んだ。
特に「抱っこ紐」で包れて行くのがお好みのようで、
自分で抱っこ紐を持ってきて、「これで行く」と自己主張していた。
抱っこ紐に包まった「ゆず」は、僕の胸の中で、
小さくまとまっていた。
やがて、歩き出すと、ちょうどいいのか、
スーッと寝てしまう。
お昼寝の時間帯だからって言うのもあるけど、
抱っこ紐で出かける頃になると、寝てしまうことが多かった。
で、病院に着いてから起こされるので、
「せっかく気持ちよかったのに」という一泣きと、
注射針の恐怖で一泣きするという毎回のお決まりのパターンがあったけど。
そんなわけで、休職の間は、
やたら「ゆず」の育児に関わった。
熱が出たと言えば迎えに行き、(もちろん「もも」も)
どっか出かけたいと言えば連れていき、(もちろん「もも」も)
おもちゃが欲しいと言えば買いに行き、(これは「もも」に内緒もあった)
よくお出かけを抱っこ紐でしたなぁ、と思い出す。
そのせいか知らないけど、
「ゆず」はいまだに、妻より僕に懐くことが多い。
気付くと僕の膝の上を占領して、テーブルで作業している。
今の僕はもちろん、休職も明けて、
普通に仕事に明け暮れている。
なかなか子供たちとゆっくり出かけているゆとりもない。
だからたまに、どっぷり育児に関わったあの時期に、
戻りたいなと思う。