「もも」が小さかった頃の話。
近所のカフェに行った時のこと。
このカフェは、いわゆる「福祉カフェ」であって、
福祉作業所のみなさんが、従業員となって働くカフェです。
ちょっと大きな声で独特の話し方をしていたり、
ちょっとしたミスがあったりと、
なかなかもって、賑やかなカフェで、
僕は気に入って、今も通っています。
「もも」が3歳のころ、一緒に行くというので連れていきました。
その時に「もも」はケーキを頼んだのですが、
何か雰囲気が、他のレストランやお店と違う、ということを感じたようで、
いつもに比べて、周りをきょろきょろ見たり、
店員さんをジーッと見たりと、落ち着かない感じで過ごしていました。
やがて「お待たせしましたー!」とケーキと、
僕のコーヒーを運んできてくれた店員さん。
ちょっと動きが大きかったせいか、
コーヒーは、ソーサーの上にちょっとこぼしました。
まあ、そのくらいはよくあることなので、
僕も驚きはしなかったのですが、
ケーキの方は、勢いよく置いたせいか、
上のイチゴが落っこちてしまい、
そのまま、お皿から脱走してテーブルの上まで転がりました。
「もも」はびっくりして見つめていましたが、
店員さんは慣れた様子なのか、
「しっつれいしましたー」と陽気に言って、
ケーキのお皿を持ち、イチゴをつまむと、
また戻っていきました。
そして、新しいケーキを持ってきてくれました。
今度は幾分か慎重に置き、
「ご注文の品はお揃いでしょうかー」と言って、
何事もなく戻っていきました。
「もも」はケーキに異変が起きることに心配したのか、
いつものペースの2倍くらいの勢いで、
あっという間に食べていました。味も何もなかったんじゃないかな。
帰り道に感想を聞いてみると、びっくりしたようでしたが、
「いろんな人が働いているんだよ」と、3歳に話すと、
分かったような不思議なような顔をしていました。
時を経て、ついこの前。
「もも」「ゆず」と奥さんとランチをしに、そのカフェへ行きました。
「もも」はケーキ事件以来の来店。「ゆず」は初めてです。
もうイチゴが落っこちたことなぞ覚えていない「もも」は、
「お腹すいた~」と言いながら、BLTサンドをペロリ。
周りで何が起きていても動じなくなっていました。
「ゆず」は、何かが他の店と違うことを感じたようで、
興味津々で店の様子を見ていましたが、絵本を見つけると、
そちらに夢中になっていました。
途中でトイレに立った時に、まごまごしていたら、
「そこのボタンを押すと明かりがつきますよ」
「手を洗うところはこっちですよ」などと、
矢継ぎ早に説明を受けていて、ちょっと驚いていましたが。
帰り道、「ゆず」が「あのカフェの人、声が大きいからびっくりした」と
話していました。
「いろんな人が働いているんだよ」と分かるように伝えると、
ちょっと分かったような顔をしていました。
そんなカフェで、僕も休日は仕事をしています。
ス〇タバやドト〇ルよりも、よほど人はいないし、賑やかだけど、
落ち着く場所なのです。