赤ちゃんの頃の「ゆず」は抱っこ紐が大好きだった。
出かける時も、乳母車を使うよりは、抱っこ紐の方を好んでいた。
安心するようだ。
包まれて、小さくなって寝息を立てていた姿は、もう見られないだけに、思い出しただけでも懐かしい。
ただ、安心しきってしまうのか、どこに行く時でも寝ていた。
夏休み。水族館に行くことになった。
「もも」は前の日から興奮しており、どんな魚がいるのか、何を見たいか、図鑑を引っ張り出してきて張り切る。
「ゆず」はよく分かってないから、「もも」の興奮に引っ張られるように騒いでいる。「しゅごいねー」とか言ってる。
で、いざ当日。
「ゆず」を抱っこ紐で結いたら、もうモゾモゾしている。
身体のフィットするポイントを探っているようだ。
そのまま歩いて駅に着き、電車に乗る頃には、スースー寝ている。
声を掛けてもしっかり寝ている。
水族館へ向かうバスの中でも、スースー寝ている。
水族館に着いてもスースー寝ている。
一応声を掛けるのだが、熟睡しているようでなかなか起きやしない。
「もも」はイワシの回遊や、大きなサメ、イルカショー、カクレクマノミなど、大興奮であった。
いちいち「いい反応」をしていた。
一方、「ゆず」はそれらの目前でも、スースー寝ていた。
寝ている姿を、イワシの回遊のそばで写真に収めたが、高いびきの姿とイワシが変なコントラストを生んでいて面白い。
結局、退館するまで起きなかった。
お昼は、その近所のファミレスに行った。
席に案内され、抱っこ紐を緩めた途端、大あくびをしたと思ったら、目を覚ました。
水族館で魚を一匹も見ず、お子様ランチのエビフライだけ見て帰ってきたのだった。
このイワシとの写真はたまにアルバムを開くと出てくる。
「ゆず」にこの時のことを話すと照れ笑いを浮かべ、覚えてないと言う。
そりゃ1歳だったしなぁ。
でも、その時のフィット感が懐かしいのか、今でも私に抱っこをねだってくる。
もちろん抱っこ紐には入らないが、こっちも懐かしい感覚に陥る。
いつまで抱っこできるやら。