教師の日常

日々の出来事の記録です。主に仕事、子供、病気のこと。

雨上がりの夜に

ある年のボーナスで、私は、電動自転車子ども椅子2つ付き、を買った。

理由は当然、保育園の送り迎え。ちなみに諭吉さんが16人、旅立った。

 

2人が5歳と2歳の頃の、ある夏の午後。

職員室で必死にプリントの丸つけをしていた。

枚数が多く、えらく手間取っていた。

外を見ると、彼方に黒い雲が見えるが、まだ晴れ間はある。

まだ大丈夫、降らないと信じて、かなりギリギリまで仕事をして、2人のお迎えに向かった。

 

外へ出ると、思ったより晴れ間が少なく、黒雲が段々と覆い尽くしてきた。

 

保育園に着くとまず「ゆず」が飛びついてくる。

適当に相手をしながら、着替えやコップをしまっていると、先生が来て「おかえりなさい、今日のゆずちゃんは…」と始まる。

急いでいるので、作り笑顔で適当に相槌をしながら片付けていく。

次は「もも」の所に行くと、同じように飛びついてくる。

適当に(以下4行同じ)。

 

「あ、そういえば」と先生。「今日、ももちゃん、工作したんで渡しますね」

「はぁ?こんな時に?」と言う間もなく、大きなウサギのような犬のような紙工作を出してきた。

無理に入れられないので、実はネコだった工作を潰れないように、カバンに入れる。

挨拶もそこそこ外に出ると、一面真っ黒な空。

ギリギリ家まで間に合うかな…。

2人を乗せて、出発した瞬間に頬が濡れて、一滴、二滴ときて、バケツをひっくり返したように雨が降ってきた。

 

途中のトンネルで雨宿りした方がいいかと思いきや、雷がすごい勢いで鳴り、ふと見ると、「ゆず」は震えていて、「もも」は泣き出していた。

 

家まで5分もかからない。行こう。

スマホで雲レーダーを見ても、止むまでしばらく掛かりそうだった。

 

雷雨の中、3人でびしょびしょになりながら帰る。

雷も鳴るから、気を紛らわそうと適当な歌を歌ってると、「もも」も「チューリップ」を歌い出し、「ゆず」はよく分からず、ワァワァ騒いでいた。

 

家に着いて、自転車の片付けもそこそこに、濡れたものを玄関に放り出して、風呂場に駆け込む。

風呂を沸かすのと、子供たちを洗うのとを同時にしながら、泡を流して風呂で温まらせる。

その時のお風呂が楽しくて。

 

さっき聞けなかった保育園の出来事。

雷が怖かったこと。

「パパ、何の歌歌ってたの?」「あれはパパが好きな歌でね…。」

 

こんな時間がずっと続くといいな。

子どもたちと話せる時間が、もっとあるといいな。

 

そんな気分に浸りながら、風呂を上がると、すっかり雨は止んで、窓から星が見えた。

さ、着替えたら濡れた洋服を洗濯して、リュックを乾かして、と思ってリュックを開けると。

……さっきの「もも」の工作のネコが、びしょ濡れになって、ホントに何だか分からない生き物に変身していて、大笑いした。

 

妻が帰ってきて「大雨だったね。止むまで待ってたら小降りになったから帰ってきたけど。…何だか楽しそうだけどどうしたの?」

子どもたちとニヤニヤしながら、ことの顛末を話した。