私は運動会の統括役で、6年生の担任で、組体操の指導もしていた。
組体操では、技の指導や全体の構成、曲の順序を考えていた。
同時に運動会全体の進行役でもあるので、プログラムを作り、本番までの練習日程を決め、教員への連絡もし、保護者へのお便りを作り、全校での練習日に全体指導する。
これに普段の授業もあり、保護者の対応もして、子どもたちの生活指導もあった。
そんな年。
運動会前日の給食後から雨が降り始め、予報では夜明け前に止むようだ。
こういう天気が一番判断に困る。
はっきり晴れなら運動会、はっきり雨なら授業やって1日延期、と言える。
今回は雨が止んでても、校庭が水浸しでは乾くまで運動会ができない。
つまり明日の朝、めちゃくちゃ晴れたとしても、校庭が使えなければ延期となる。
そうなると、「楽しみにしてんだよ!」という武闘派の保護者たちが、抗議の電話をかけまくってくる(経験済)。
さてどうしましょうか、と校長、教頭と頭を抱え合う。
予報は晴れだから、あらかじめ中止とも言えない。
まあ、現状はやる方向で、となんとなくの結論。
校庭が乾いてなかったら考えましょう、と先送り。
そして当日。雨は止んでいる。
朝イチで学校に行き、校庭を見ると乾いてはないが、水たまりも少ない。
えぇと、どうしよう…。
7時までに判断しないと、子供たちも職員も混乱する。
「中止にしちまえよ、楽だぞ」
「ダメよ、みんな楽しみにしてるんだから、やりましょうよ」
天使と悪魔が言い合ってる。
別に悪いことしてるわけじゃないのに、なぜか良心が痛み、葛藤が始まる。
悩む私に、校長の一言。
「登校した子たちに雑巾で校庭を拭かせて、水気をとらせよう。そうすればできる。」
その後、実施の決定をし、ただし開始を1時間遅らせる旨を電話連絡網でまわし、準備の段取りを職員に指示し、登校してきた6年生に雑巾2枚持たせて、水溜りや湿りの多い所を吸水させたんだな。
もうね、運動会よりも疲れた。
本番前から疲れた。
ってか、ずっと何やってたんだ?何だこの光景?校庭を雑巾掛けしてるよ、雑巾真っ黒だよ、あぁあ、体操着まで黒くしちゃったよ……。
結果、みんな楽しく運動会が出来ましたとさ。